> TOP > PC Zone > TIP Zone


サスペンドから復帰したい(泣)
Windows98が発表された当初、各種マスコミが騒ぎ立てた"売り"の一つに「OnNow」がありました。
いわゆる「Windows98は5秒で起動できる!」というアレです。後で恥をかいたライターさんも多いと思いますがアレは大いなる誤解でした。ウソではないと言えばないとも言えなくも・・・起動ってとこはウソかな(笑)
まあOnNow自体あとから取って付けたようなイメージが強いのですが、それを実現するための手段であるべき規格「ACPI」がまた混乱を招いたのでした。
古き良きAPM(Advanced Power Management)
1991年にM$とIntelが決めた省電力に関する規格「APM」ではBIOSが電源管理を行っていました。APMに関してはノートパソコンのユーザーさんの方が詳しいと思いますが、ボクのLibrettoの省電力モードの設定項目を見ると、BIOSのそれとほぼ同じ物です。要するにBIOSの電源項目をWindows上からイジるインターフェイスが提供されているに過ぎません。
そして、重要なことはBIOSはハードウェアに依存するということです。メーカーごとに、さらに製品ごとに、さらにさらに製品のバージョンごとに設定項目の内容や設定方法が異なっていたのです。
この辺は各メーカーさんのノウハウってところですが。
混沌のACPI(Advanced Configuration and Power Interface)
ACPIの存在意義は高度な(すでに怪しいが)電源管理を標準化することと、それによるOnNowの実現です。
一方OnNowの意義は例の「5秒で起動(復帰)」と同時に、「OSやアプリが電源を管理できること」です。後者についてはボクもよくわからないのですが、APMではBIOSがハードウェアを監視していただけなので何も入力が無い状態で一定時間(設定していればですが)経過すると画面がブラックアウトしたりしました。裏で何か動いていてもです。
これをソフト側から「今動いてるから落ちるな」っていう命令を下せるっていうことなんですが・・・
対応ハードウェア
ACPIの恩恵を受けるには使用している全てのハードウェアがACPI対応品であることが必須条件なのです。
これは結構シビアな問題です。Windows98発売後のメーカー製マシンを購入したというならまだしも、古いマシンをアップグレードして(又はしないで)使いつづけている場合とか、完全な自作機の場合、Windows98を導入したからと言って「5秒で復帰」とはいきません。というよりむしろ「一生待っても復帰しない」という事態が待っています。
メーカーも尻込み
前述の「Win98発売後のメーカー製マシンなら」っていうのはちょっと甘い言い方ですね。実はWindows98発売直後に出たメーカー製のマシンは軒並みAPMモードで出荷されています。いきなりACPIモードで出荷したチャレンジャーは何社あったっけな?調べるのは大変だけど確かIBMにNEC、当事者の東芝もそうだったかな。
ちなみにパッケージのWindows98を買ったってセットアップ時にpjオプションをつけて実行しないとACPIモードにはなりません。M$としても「間に合わなかった」という感じでしょう。


ボクはレジストリを編集しました。

APMでできるじゃん
なんでACPIがこんなに不遇なのかというと、ズバリ必要ないからでしょうね。イヤ言い過ぎかな?「あんまり」とか「当面」とか付けた方がいいかな(笑)
要するに、標準化こそなされていないものの、各社APM BIOSを熱心に発展させてきたわけで、今更それをチャラにして欠片もノウハウの無いACPI用のドライバを書けだの言われてもAPM時より改善されるわけがないのです。少なくとも時間がかかることは明白で、というのもノートパソコンにとって駆動時間は最重要事項ですからね、電源管理に関わる部分はメーカーさんも必死で開発してたわけです。APMで。
現在は各パーツ屋さんからはACPI対応の物がリリースされていますが。
船底の穴
システムがACPIモードでセットアップされていたとして、サスペンドっていう項目があったとして、じゃあ使えるのか?っていうことであれば現状では間違い無く「No」でしょう。
要件は「全ての構成要素がACPI対応であること」です。未対応品が混入していると、サスペンドからの復帰が出来ないことになります。
ボクのマシンでも一切帰ってきませんし(T-T)
規定されているPowerStateを表に示しておきます。
※1…Global System State
※2…Sleeping State
状態 内容 復帰時間 消費電力
G0※1 S0※2 フルパワーでの稼動。 最大
G1 S1 CPU・RAM・チップセットは通電したサスペンド。 最小 もっと大
S2 CPUとチップセットもオフ。
S3 メモリ以外全てオフ。(メモリサスペンド又はSuspend to RAM)
S4 メモリの内容もHDDに退避。(ハイバネーション又はSuspendo to Disk)
G2 S5 ソフトオフ。CPU停止、メモリ破棄。 最大 最小
G3 機械的に電源断。 最大

幻のP2B-E
特定のハードウェアに言及するつもりは無かったのですが、個人的に実感があった部分に触れておきます。
ボクが最初に手にしたマシンはP2Bというマザーボードを搭載していました。これは今でも非常にいいボードだと思っているのですが、ボクが購入した頃にはP2B-Eというニューモデルが発表されていたのです。P2Bと比較すると、PCIスロット、DIMMスロットが各1追加されていて悔しい思いをしました。
しかし、P2B-Eはいつまで経っても出荷されず、結局P2B-Fという妥協の産物(失礼)が発売されました。国内専用だったと思います。
星条旗は低空の星
当時はサスペンドといってもS1(表を参照)が普通で、スタンバイ中でも20W以上の電力を消費していました。
ところで、コンピュータを起動したときに画面(普通は右上)に表示される星のロゴはご存知ですか?
あれは米EPA(環境保護局)の認定を受けたGreenPCに付与されるもので、「Energy Star」といいます。「Energy Star computers program」によって規定される省電力機能を備えていることが条件なのですが、その基準の中に「スタンバイ時の消費電力は(周辺機器含む)30W以下」というものがありました。
ところが、この規格が2000年をもって改訂され、スタンバイ時には15W以下に抑えることが出来ないと認定を受けられなくなってしまうのです。
星の数を数えて
S4(表を参照)のハイバネーションを用いることで消費電力は抑えることが可能ですが、メモリ内容をディスクに書き出しているために復帰に時間がかかり、OnNowの実現には不向きです。したがってP2Bの製造元のASUSはS3のメモリサスペンドの実現を目指していました。当時のボクは全く知らなかったし興味も持たなかったのですが、P2B-Eの真意はスロットの数ではなくてACPI対応ということでした。
しかし。
前述のように搭載する拡張カードが全てACPI対応品でないと正常に作動しません。結局ASUSは「とても全てのカードをチェックしていられない」とS3をあきらめ、従来のS1のまま外見は同じP2B-Fを出荷したようです。
PLLが変わってるとかそういうことはここでは問題じゃないですね(笑)
人柱は誰が為に
そして発売されたP3B-F。売りの一つは「Suspend To PAM(STR)」これは当初目指していたS3ステートということになりますね。もちろん全てのデバイスがACPI対応であることと、Windows98がACPIモードでセットアップされていることが条件です。
さっそく購入した初期ロット品で試してみましょう。すでにインストールされている環境を再構築するのが面倒だったので後述する方法でレジストリを直接編集してACPIモードに切り替えます。
さあ、「スタンバイ」開始。おー、全てのFANが停止しました。静かじゃないですか〜あはは。今まで点灯しているだけだった電源ランプが点滅しています。しかし問題は復帰ですからね。復帰は・・・復帰・・・復帰・・・できません。ぶしゅー。
→リセット。
「サスペンドから復帰したい(T-T)」
おまけ:ACPIモード。
方法1:OSのインストール時にpjオプションを付けて「setup /pj」とします。
方法2:レジストリエディタで
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Detect\
に新規作成→文字列で「ACPIOption」を作成し、その値に「1」を入れた後エディタを終了し、「ハードウェアの追加」を行います。